チャージバックとは

チャージバックとはクレジットカードの所有者を守るためのルールで、不正利用された場合などにクレジットカード会社が加盟店への決済を拒否することです。近年クレジットカードの不正利用が増加傾向にあります。クレジットカード会社は、所有者が不正利用によって損害を受けないように、対策としてチャージバックというルールを導入しています。
クレジットカード決済は、クレジットカード会社から加盟店の事業者に商品代金が支払われるのが一般的な流れです。しかしチャージバックが起こると、クレジットカード会社は加盟店への決済を拒否できるため、EC事業者は売上を回収できなくなります。
不正利用があった取引が前払いだった場合は商品代金のみ損失となりますが、商品発送後の支払いなら商品と商品代金の両方で損失が発生し、EC事業者は大きな損害を受けかねません。
チャージバック対策が重要な理由
本項では、決済機能をもつWebサイトやECサイトの運営にチャージバック対策が必要である理由を紹介します。主な理由は以下の2点です。
- クレジットカード不正利用の増加
- EC市場拡大と転売の増加
クレジットカード不正利用の増加

クレジットカードが不正利用される事件は年々増加しています。2022年12月に公開された日本クレジット協会の「クレジットカード不正利用被害の集計結果について」によると2022年の被害総額は300億円以上で、内訳は番号盗用被害額が約291億円、不正利用が約17億円、偽造カードは約1億円です。
クレジットカード不正利用の被害額は全体の5.3%で、前年度の5.1%よりもやや高くなっていることがわかります。クレジットカード不正利用の増加にともない、チャージバックの件数の増加も想定されるでしょう。決済機能をもつWebサイトやECサイトの運営者はチャージバックへの対策を行う必要があります。
クレジットカードの不正利用を含むチャージバックの原因は後ほど解説するので、そちらも合わせてご覧ください。
参照:一般社団法人日本クレジット協会「クレジットカード不正利用被害の集計結果について」
EC市場拡大と転売の増加

EC市場の拡大にともなって不正な転売行為が増えたことも、チャージバック対策が重要視されている理由のひとつです。経済産業省が2022年8月に公表した「電子商取引に関する市場調査」によると、2022年のEC市場規模は約21兆円で前年度から約7.4%増加しており、EC市場は急速に拡大していることがわかります。
コロナ禍の影響で巣ごもり需要が高まり、ECサイトでの買い物やオンライン決済が増えたことがEC市場拡大要因のひとつです。また、クレジットカードを不正利用してECサイトで購入した商品を、フリマアプリで不正に転売する行為も多く見られます。これらの不正な取引もチャージバックの対象になることから、ECサイトとしては対策が必要です。
少額の日用品や衣料品から高額のブランド品・家電製品なども不正利用の対象になりやすいため、チャージバック対策を行わないと大きな損害が出る恐れがあります。
参照:経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」
チャージバックの主な原因

チャージバックが発生する主な原因には、次の4つが挙げられます。
- クレジットカードの盗難・紛失
- クレジットカード情報の漏えい・流出
- クレジットマスター
- その他の原因
それぞれの原因について確認していきましょう。
クレジットカードの盗難・紛失
まずはクレジットカードの所有者がカードを紛失したり盗難に遭ったりして、第三者に不正利用されることでチャージバックが発生するケースです。例えばスリやひったくり、置き引き、車上荒らしなどの手口が挙げられます。
クレジットカードの裏面には、数字で構成されたセキュリティコードが表記されています。クレジットカード番号とセキュリティコードがあれば、カードの所有者でなくてもオンラインで決済できてしまい、チャージバックが発生しやすくなるでしょう。
クレジットカード情報の漏えい・流出
クレジットカード情報が漏えい・流出した場合にも、チャージバックは発生しやすくなります。クレジットカード情報が漏えい・流出する例として、マルウェア・スパイウェアなどのウイルス感染や、偽のメールやホームページにアクセスを促し個人情報を盗み出すフィッシング詐欺などが挙げられます。
またECサイトのセキュリティ対策が不十分で外部から不正アクセスされたり、人為的なミスで情報漏えいが起きたりするケースも少なくありません。ECサイトでクレジットカード情報の漏えい・流出が起こると損害賠償を起こされることや、社会的な信用を失うリスクも高まります。
クレジットマスター
クレジットマスターと呼ばれる詐欺の手口によってチャージバックが発生する場合があります。クレジットマスターとは、利用中のクレジットカード番号とそのセキュリティコード、有効期限を予測するためのコンピュータプログラムです。
クレジットカード番号は規則性があるため、クレジットマスターによる予測は可能です。ECサイトのセキュリティを高めてもクレジットマスターによる被害防止は難しいことから、現状における最善策はチャージバック対策以外にないといえます。
その他の原因
チャージバックが発生するその他の原因は、商品の未受領や支払い拒否などもあります。
まず商品の未受領とは購入者が商品代金を支払ったのにもかかわらず、ECサイト側で商品の発送を行わない状態のことです。その場合、購入者がクレジットカード会社に対して決済の取り消しを求めて認められると、チャージバックが起こります。商品の発送までに時間がかかるときは、購入者にわかりやすく伝えることで決済が取り消しになる事態を避けられるでしょう。
支払いの拒否とは、購入者が商品に納得できない場合に商品代金の支払いを拒絶することです。例えば、ECサイトの掲載内容と異なる商品や、破損・欠陥などがある商品が届いた場合に起こる可能性が高まります。
ECサイトに掲載する商品情報は正しく入力する、画像と実際の商品の色が異なる可能性がある旨を記載する、発送前に欠陥がないか確認したうえで入念に梱包するといった対策をして支払い拒否を防ぎましょう。
チャージバックの流れ

本項ではチャージバックが起こった際の手続きの流れを解説します。チャージバックの流れや仕組みを理解して、EC事業者としてどのような手続きを取るのか確認しておきましょう。
チャージバックが発生する流れ・仕組み
クレジットカードの不正利用があった場合の、チャージバックの流れや仕組みを見てみましょう。
- 1. クレジットカード情報が第三者に流出
- 2. ECサイトで不正利用による商品の売買取引が行われる
- 3. クレジットカード会社からEC事業者へ商品代金が支払われる
- 4. クレジットカード会社がカード所有者に利用料金を請求する
- 5. カード所有者が不正利用に気づき、クレジットカード会社に決済取り消しの申し立てをする
- 6. クレジットカード会社からEC事業者へチャージバックの通知が伝えられる
チャージバックは、カードの所有者からクレジットカード会社に決済取り消しの申し立てがあったときに発生します。上記の流れのようにEC事業者が商品代金を前払いで受け取っている場合は、決済代行会社から商品代金の返還を請求されます。
EC事業者は警察に被害届を提出することも可能ですが、不正利用した第三者に発送した商品を取り戻すことは実質困難といえるでしょう。
EC事業者の手続きの流れ
チャージバックが起こった際に、EC事業者はどのような手続きをすれば良いのでしょうか。まずはチャージバックの対象となる商品代金をクレジットカード会社に返金します。チャージバックの理由が返品の場合は、EC事業者が購入者へ直接連絡を取り、手もとにある商品の返送を依頼するのが一般的な流れです。
不正利用の原因がEC事業者にない場合でも、購入者に連絡を取る際は誠意をもって対応することで、今後も継続して利用してもらえるでしょう。クレジットカードの不正利用によって発生したチャージバックはEC事業者も被害者となるので、警察に被害届を提出することを検討しましょう。
ただし不正利用によって購入された商品はフリマアプリを通じて転売されている恐れもあるため、EC事業者が商品を取り戻すのは難しい場合があります。EC事業者が損害を最小限にするには、のちほど解説するチャージバック対策の方法を参考にしてください。
チャージバックのリスクが高い商材

ECサイトで取り扱われる商材にはさまざまなものがありますが、そのなかでもチャージバックが発生するリスクが高い商材が存在します。例えば、以下のようなものが挙げられます。
- 家電製品
- お酒
- サプリメント
- 美容関連
- 流行商品
- デジタルコンテンツ
- 電子マネー
- チケット
- ゲーム機
- ブランド品など
上記の商材を扱っているEC事業者は、不正利用によるチャージバックのリスクが高いことを理解しておきましょう。特に上記で挙げた商材が大量注文された場合は、商品を発送する前にクレジットカードが不正利用されている可能性がないかといったリスクを考慮する必要があります。
ECサイトのセキュリティ対策を見直すことで、チャージバックのリスクを軽減できます。ECサイトのセキュリティ対策を強化するなら、GMOイプシロンのセキュリティサービスがおすすめです。詳細は以下の記事をご覧ください。
チャージバック対策の方法

チャージバック対策としてセキュリティを強化する方法は、主に4つあります。
- 3Dセキュア
- 不正検知システム
- セキュリティコード認証
- チャージバック保証を活用
それぞれの方法を詳しく見ていきましょう。
3Dセキュア
3Dセキュアとは、インターネット上で安全にクレジットカード決済を行うための仕組みのひとつです。
クレジットカード番号や有効期限のほかに、パスワードによる追加認証をしてセキュリティを強化します。3DセキュアはVISAやMastercard、JCB、American Expressの4つのブランドで採用されており、呼び方は以下のようにブランドによって異なります。
- VISA:Visa Secure
- Mastercard:ID Check
- JCB:J/Secure
- American Express:American Express SafeKey
3Dセキュアを導入することでクレジットカードの所有者にしかわからないパスワードでの追加認証が可能になり、インターネット上での不正利用やチャージバックのリスクを減らせます。
3Dセキュアの詳細については、こちらの記事をご覧ください。
※2025年4月より3Dセキュアの導入が義務化されました。
3DセキュアはECサイトに必要?利用方法や使えるカード会社も解説
不正検知システム
不正検知システムとは、クレジットカードの不正利用による取引を検知するシステムです。不正検知システムに購入者のメールアドレスを入力すると、不正利用のリスクを4段階で判断します。
- 信頼性高:不正利用のリスクは極めて低く、信頼性が高い
- 低:不正利用のリスクは低い
- 中:不正利用のリスクは高くない
- 高:不正利用のリスクは極めて高い
不正検知システムによる結果をもとに、EC事業者は受注・発送の可否を判断します。不正検知システムを導入すれば不正利用による取引を未然に防げる確率が高まるため、チャージバックの発生だけでなく商品を失うリスクを減らせます。
不正検知システムの詳細については、こちらの記事をご覧ください。
クレジットカードの不正検知システムとは?ECサイト運営には必須
セキュリティコード認証
セキュリティコード認証とは、クレジットカードの裏面に記載されている3~4桁の番号を本人認証として利用するセキュリティ対策です。
セキュリティコードはクレジットカードが手もとにある所有者だけが知り得る情報で、カードの磁気情報には含まれません。そのため、インターネット上で決済をする際の本人認証の方法として有効です。
万が一、クレジットカード番号が第三者に知られてしまってもセキュリティコードはわからないので不正利用を避けられます。ただし、クレジットカードの盗難・紛失による不正利用の場合は第三者がセキュリティコードを簡単に確認できるため、その場合はチャージバックを防げません。
チャージバック保証を活用
上記で紹介した3Dセキュア・不正検知システム・セキュリティコード認証を導入といったセキュリティ対策を行っても不正利用を完全に防ぐのは困難ですが、チャージバックが発生してしまったときに保証を受けられるサービスもあります。チャージバック保証は、不正利用によるチャージバックが起こった際に被害額を保証してもらえるサービスです。
チャージバックが発生すると、クレジットカード会社から入金された売上金を払い戻さなければならないだけではありません。発送済みの商品は手もとに戻って来ないことがほとんどなため、EC事業者には商品に対しても損失が発生します。
チャージバックはクレジットカードの所有者を守るためのルールで、同じく被害に遭ったEC事業者の商品代金までは肩代わりしてくれません。決済代行業者を利用すればチャージバック保証サービスを簡単につけられるため、チャージバック対策におすすめです。
簡単にチャージバック対策を導入する方法
チャージバック対策を導入するには、決済代行業者のオプションを利用すると便利です。決済代行業者を利用するメリットには、上記で紹介したチャージバック対策を導入してチャージバック防止を図れることが挙げられます。決済代行業者では、セキュリティ対策のオプションを用意しており、チャージバックへの対策を行えます。
また、チャージバック保証サービスをつけることで、チャージバックによる被害額の一部を保証してもらえるためEC事業者は損失を最小限に抑えることも可能です。多くの決済代行業者がありますが、なかでもGMOイプシロンをおすすめします。
GMOイプシロンは、初期費用・トランザクション処理料が無料、かつ簡単に導入できる決済サービスです。国際規格に完全準拠したセキュリティ環境下で運用しており、オプションを活用すれば3Dセキュアや不正検知システム、セキュリティコード認証、チャージバック保証サービスをひと通り導入できます。
チャージバック保証サービスは月額3,000円でつけられ、月あたり上限100万円まで保証します。GMOイプシロンの決済サービスについて詳細をまとめた資料もあるので、ぜひ参考にしてください。