キャッシュフローとは

ECサイト運営におけるキャッシュフローとは、簡単にいえば「資金繰り」です。
キャッシュは現金、フローは流れを意味します。現金の流れ、つまりEC事業者に入ってくるお金と出ていくお金を数値化したものがキャッシュフローです。キャッシュフローは次の数式で計算できます。
「キャッシュフロー=入金(あるいは手元にある現金)の金額−出金の金額」
入金される額と出金する金額は毎日変動するため、キャッシュフローも日によって変動します。入金される金額が出金する金額よりも多ければキャッシュフローはプラスです。逆に、入金される金額よりも出金する金額の方が多く、手元に残る現金が不足する場合、キャッシュフローはマイナスになります。
キャッシュフローをプラスに保つことがECサイト運営を安定させるコツです。逆に、帳簿上では収益が出ていてもキャッシュフローがマイナスの状態が続けば、必要な仕入れや支払いができなくなり、黒字倒産する恐れがあります。毎月のキャッシュフローがプラスになるように、仕入れを行う時期や金額などを調整しましょう。
キャッシュフローと利益の違い

キャッシュフローと利益は異なります。いくら利益が出ていてもキャッシュフローマイナスの状態が続けば、ECサイト運営は危うくなりかねません。
利益とは売上金額からコストを引いた金額です。しかし「利益=現金」とは限りません。以下で具体的に見てみましょう。
たとえば、仕入れ値が1,000円の商品を1,500円で販売した場合、利益は500円と計算できます。しかしECサイトの場合、ユーザーはクレジットカードやQRコード決済、銀行振込などで決済するため、売上金額がすぐにEC事業者の口座に入金されるわけではありません。
つまり販売当日のキャッシュフローは仕入れ値の1,000円分マイナス、あるいは仕入れを行わず在庫で対応した場合、販売当日のキャッシュフローは0円となります。
ECサイトのキャッシュフローが悪化する原因

販売してから売上金額が入金されるまでの期間が長いと、その間の現金のやり繰りに問題が発生するリスクが高くなります。それが、ECサイトのキャッシュフローが悪化する主な原因です。
ECサイトで販売する商品を仕入れる場合、一般的には当月末締め・翌月末払いで支払わなければなりません。翌月末までに仕入れた商品がすべて売れ、売上金額が入金されていれば問題ありませんが、実際にはなかなかそうはいかないことも多いでしょう。
たとえば、仕入れた商品が想定よりも売れない場合があります。その場合、仕入先への支払いが難しくなるのは明らかです。あるいは、仕入れた商品がすべて売れたとしても、売れたタイミングが月の後半になった場合は、売上金が入金される前に仕入れ先への支払い日が来るケースがあるでしょう。
手元の現金が不足して支払期日までに支払いができない場合、仕入れ先との信頼関係が崩れ、ECサイトの運営継続も難しくなってしまいます。また、キャッシュフローをプラスに保てていないと銀行から信用されづらく、融資を受ける場合審査に通りにくくなります。
ECサイト運営においてキャッシュフローが重要な理由
ECサイト運営においてキャッシュフロー管理が重要な理由は主に次の5つです。
- ECサイトは出金・回収のタイミングがずれやすい
- 今後不足する金額を予想できる
- 余剰資金を適切に投資に回せる
- 借入しやすくなる
- 黒字倒産を防げる
それぞれ以下で解説します。
ECサイトは出金・回収のタイミングがずれやすい

ECサイト運営は、仕入れや広告費などの経費を支払うタイミングと、売上金額が入金されて経費分を回収できるタイミングにずれが発生しやすい特徴があります。キャッシュフロー管理を徹底し、出金と回収のタイミングを入念に把握しておくことが重要です。
ECサイト運営において仕入れた商品が即日完売することは少ないため、基本的には先に仕入れ金額を支払い、その後売上により仕入れ金額を回収する流れになります。
資金があれば仕入れ先への支払いに困ることはありませんが、ECサイトを運営するなら仕入金額を確実に回収することが重要です。そのためには商品を売る必要がありますが、売れた時点で仕入金額を回収できるわけではありません。商品が売れてから仕入金額を回収できるまでには日数を要する点に注意しましょう。
今後不足する金額を予想できる

現金が不足すれば必要な支払いに間に合わなくなり、ECサイト運営の継続が難しくなります。
そのため、現金が足りなくなりそうな金額や時期をあらかじめ予測しておくことは非常に重要です。キャッシュフロー管理を徹底しておけば入出金のタイミングを把握しやすくなり、これから不足するであろう現金の金額や不足しそうな時期を予想できます。
キャッシュフローを管理するには、あらかじめExcelやGoogleスプレッドシートなどで支出表を作成する方法がおすすめです。支出表に入れる主な項目は以下のとおりです。
- 月々のサイト運営費(レンタルサーバー代など)
- 家賃光熱費
- 仕入先への支払い
- 人件費
このように、定期的な支払いの金額や時期を可視化しておけば、現金が不足しやすい時期や金額を事前に把握して仕入れる量などを調整でき、現金の枯渇を防止できます。
余剰資金を適切に投資に回せる

キャッシュフローを管理して入出金のタイミングや金額を事前に把握できれば、毎月どのくらいの現金が手元に残るのか明らかになります。そうすれば、無理のない範囲で余剰資金を適切に投資に回すことも可能です。
たとえ銀行口座にある程度まとまった資金がある場合でも全額を投資してしまうと、いざ支払いが必要なタイミングに現金が足りず、キャッシュフローがマイナスになる恐れがあります。仕入れ先の支払いだけではなく、家賃光熱費やサーバー代など、毎月かかる出費に備えて備蓄しておかなければなりません。
効果的に余剰資金を投資するためにも、まずは、月々の入出金の流れやタイミングを正しく把握できるようにしましょう。
借入しやすくなる

ECサイト運営が軌道に乗って事業拡大を考えるようになったら、それにかかるコストをまかなう資金を銀行から借入する必要も出てきます。借入できるかどうかは、銀行の審査によって決定します。
銀行の審査において重視される要素は返済能力の有無です。その判断基準として、運営するECサイトのキャッシュフローの安定性をチェックされます。いつ、どのようなタイミングで現金が必要になるのか把握しておくことで、具体的な返済計画を立てやすくなります。
つまり、キャッシュフローの管理を徹底することで、銀行からの融資を受けやすくなるでしょう。
黒字倒産を防げる

いくらたくさん売り上げて利益を生み出せたとしても、仕入れや経費の支払いに必要な現金が手元になければ、経営が安定しているとはいえません。
このように帳簿上では利益が計上されていて黒字だったとしても、売上金の入金までの間手元の現金が不足して資金繰りに問題が生じ、倒産してしまうことを黒字倒産といいます。
利益が出ているにもかかわらずキャッシュフローのマイナスが数カ月も続いている場合、黒字倒産のリスクが高まります。
そうなる前にキャッシュフロー管理を徹底し、マイナスにならないように調整しましょう。あらかじめ売上金額と入金の時期を把握して、タイミングに合わせて経費を抑えるといった対策をとることで、キャッシュフローをプラスに保てるでしょう。
キャッシュフローの計算方法

キャッシュフローの数値は売上や入金・支払いのタイミングによって左右されるため、日によって変動します。ECサイト経営を安定させるためにキャッシュフローを管理するには、一定期間ごとの数値を出してそれぞれの推移に注目する必要があります。
日ごとのキャッシュフローは以下の数式で計算が可能です。
「日ごとのキャッシュフロー=当日入金される現金(あるいは手元にある現金)の金額−当日の出金金額」
また、一定期間におけるキャッシュフローの推移を把握するためには、今期間のキャッシュフローを前期間のキャッシュフローから引きます。
「月ごとのキャッシュフロー=当月末のキャッシュフロー−前月末のキャッシュフロー」
「年ごとのキャッシュフロー=当期末のキャッシュフロー−前期末のキャッシュフロー」
上記の計算でプラスとなっていればキャッシュフローが良く、マイナスとなっていれば改善が必要と判断できます。それぞれの期間でキャッシュフローがプラスになるように、出金の金額やタイミングをあらかじめ把握し、仕入れの量・時期を調整しましょう。
キャッシュフローを安定させるためのポイント

キャッシュフローを安定させる主なポイントは次の3つです。
- 仕入れのタイミングを見直す
- 支払日を調整する
- 過剰在庫に気をつける
それぞれのポイントを以下で解説します。
仕入れのタイミングを見直す
仕入れのタイミングを見直せば、支払猶予期間を長くできる可能性があります。締め日の前には在庫を減らし、締め日の後に仕入れをするようにしましょう。
多くの企業は帳簿上での締め日を設定しており、それに準じて支払い期限を定めています。たとえば、月末締め・翌月25日払いといったイメージです。仕入れ先の締め日や支払い期限を把握して仕入れのタイミングを調整すれば、仕入れから支払いまでの期間を延ばせ、その分手元に現金を残せます。
例えば、月末締め・翌月25日払いの仕入れ先から月末に商品を仕入れた場合、支払い猶予期間は25日ほどしかありません。一方、翌月1日に仕入れた場合は、支払い猶予期間は55日程度となります。
支払日を調整する
売上金が入金されるタイミングの後に仕入れ先などに支払うサイクルを作れば、手元に残る現金を長く保有することが可能です。支払い日の調整とは、前項のように仕入れのタイミングを調整することにつながります。
例えば売上発生から入金日まである程度期間が空くことがわかっており、仕入れを急ぐタイミングでない場合、仕入れを遅らせることで支払日をずらせます。
手元の現金が少ないときに支払いを行うサイクルが続くと、資金のやり繰りが難しくなるでしょう。そのような事態を回避するためにも、売上金の入金タイミングに合わせて支払い日を調整するようにしましょう。
過剰在庫に気をつける
在庫管理を徹底して在庫を増やしすぎないことも、キャッシュフロー管理において重要なポイントです。過剰な在庫を抱えることは保管・管理コストを増やすだけでなく、支払い金額の増大にもつながります。
一定の期間内で販売できそうな量を予測して仕入れる在庫の量を調整し、必要以上の量を仕入れすぎないように注意しましょう。
キャッシュフローを改善するためには

上記のようなポイントに気をつけていても、一度キャッシュフローのサイクルが悪化してしまうと、すぐに安定させるのは困難です。また、キャッシュフローが悪化している状態では、借り入れによる現金の確保も容易ではありません。そのような場合にできる2つの対策を紹介します。
早期入金や随時入金などのサービスを活用する
ECサイトの決済に決済代行業者を活用している場合、売上発生から入金までの期間として1カ月程度かかるのが一般的です。しかし、決済業者によってはオプションサービスとして早期入金や随時入金などを提供している場合もあります。
資金繰りを改善するには、そういったオプションを活用して入金サイクルを短縮する方法も有効です。これから決済代行業者と契約する場合は、早期入金や随時入金などのオプションサービスがあるかどうかも確認すると良いでしょう。
売上連動型のビジネスカードもおすすめ
売上連動型ビジネスカードとは、利用限度額が売上金額と連動して決まるタイプのクレジットカードです。売上連動型のビジネスカードを使用する場合、入金を待つことなく仕入れや経費の支払いに使えます。
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サービスを上手に活用してキャッシュフローを安定化

ECサイト運営において、キャッシュフローをプラスに保つことは必須です。そのためには、キャッシュフロー管理の徹底が重要です。期間ごとのキャッシュフローの推移を把握し、仕入れのタイミングや量を調整しましょう。
しかし支払いタイミングは仕入れ先によるため、やり繰りが難しくなるときがあります。その場合は、決済代行業者の早期入金サービスや随時入金サービスを活用しましょう。入金サイクルを短くすることでキャッシュフローの安定を図れます。
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